木工作家 内山玲を訪ねて
NiORを後にし、その足で向かったのは滋賀県。
霧がかった山あいを抜けて田んぼ道を進むと、建物全体が「ツタ」に覆われた工場のような古いコンクリートの建物が突如現れた。
ここにアトリエ兼自宅として居を構え、作家活動をしているのは木工作家の内山玲さん。
元は電電公社が使用し、廃墟となっていた建物を、同じく木工作家である旦那さんと2人でリノベーションを施し、家族4人で生活している。
幼少の時からインテリアが好きで、「生活空間を整えることが何よりも大切」と言い切るほど、細部まで感性の行き届いた開放感のある素敵な空間。
密かに田舎暮らしに憧れていた僕は、ため息が出るほど感動し、嫉妬しそうなほど羨ましかった。(むしろ少し嫉妬した)
トーネットのチェアが「この部屋のために生まれたのか」と言わんばかりにマッチした応接室に案内され、内山さんに話を伺った。
「カッティングボードを作り始めたきっかけは、この建物の改装で栗材が余ったからです。
それで何か作れないかなと思って」と、内山さん。
余った栗材の形は大小様々で形ももちろん歪。
カッティングボードは限定された条件と材料から生まれた作品だった。
「作品は作り込むというよりも、素直に素材が生かされていて、使っていくうちに経年変化も楽しめるものを作りたいという想いがありました」と、作品づくりの裏側を教えてくれた。
そんな内山さんは、昔からアンティークや古道具が好きだったとのこと。
「木製のピザピールとか、あとはビーチコーミングが趣味で、河原に転がっている丸い小石を拾ったりしていました」と思い出話にデザインソースのヒントが見え隠れしていた。
「素朴」というフレーズは捉え方によって微妙にニュアンスが異なるかもしれない。言葉を代えるなら、「あの控えめな素材感」といったところ。
規律化された工業製品のようで、実は何ひとつとして同じではない、フリーハンドで生まれた愛らしくもぼてっとしたユニークなシェイプは、まさに彼女の飾らない優しさやあたたかさそのものを反映していることが実直に伝わってきた。
「黒いカッティングボードはモダンに見えてとても新鮮でした」と伝えたところ、
内山さんは、「黒豆を煮る時にも使われる鉄粉TOお酢で鉄媒染液を作り木の成分に含まれるタンニンと反応させて黒染めをしています。
仕上げにも、えごま油を染み込ませていて全て口に入れることができる着色をしています」と、制作方法をこともなげに明かしてくれた。
作家さんは大きく2通りのタイプに分かれると思っている。
作家活動と私生活を完全に切り離している人と、逆に作家活動が生活とが連動して作品作りに反映されている人。
もしそう分けられるのであれば、内山さんは後者な気がする。
実際に本人も、「作家として活動していても、生活に無理を加えることはできないと思っています。
私の場合、生活を大事にすることが考え方や作るものにも繋がっていくと思っています」と、語ってくれた。
作家としての芯の強さや完成された素晴らしい美学を持ち合わせた中で、ひとりの人間としての内山さんそのものから湧き出た感性が作品に吹き込まれていると思い至ったのは、今回お会いして得た収穫のひとつ。
「作品」でありながら、生活の道具として使うことを前提に生まれたカッティングボード。
使っていく中で月日が経ち、それぞれの表情に仕上がっていく。
それはまさに作家であり母である内山さんのライフワークそのものを体現しており、必然的に生まれ、半分自然に身を任せることで人生のように変化していく象徴なのかもしれない。
僕が持っている内山さんのカッティングボードはまだまだ若い。
これから使っていく中での変化を楽しみ内山さんが表現したい想いを少しずつ理解していけたらと思う。
NiOR と内山玲 「二人展」
11 /19 (土) - 11/20 (日)
11am – 7pm
groundfloor Gallery 東京都目黒区中目黒1-8-1 2F
お問い合わせ:customer@undm.jp / 03-3794-4037
イベントの詳細はコチラ
霧がかった山あいを抜けて田んぼ道を進むと、建物全体が「ツタ」に覆われた工場のような古いコンクリートの建物が突如現れた。
ここにアトリエ兼自宅として居を構え、作家活動をしているのは木工作家の内山玲さん。
元は電電公社が使用し、廃墟となっていた建物を、同じく木工作家である旦那さんと2人でリノベーションを施し、家族4人で生活している。
幼少の時からインテリアが好きで、「生活空間を整えることが何よりも大切」と言い切るほど、細部まで感性の行き届いた開放感のある素敵な空間。
密かに田舎暮らしに憧れていた僕は、ため息が出るほど感動し、嫉妬しそうなほど羨ましかった。(むしろ少し嫉妬した)
トーネットのチェアが「この部屋のために生まれたのか」と言わんばかりにマッチした応接室に案内され、内山さんに話を伺った。
「カッティングボードを作り始めたきっかけは、この建物の改装で栗材が余ったからです。
それで何か作れないかなと思って」と、内山さん。
余った栗材の形は大小様々で形ももちろん歪。
カッティングボードは限定された条件と材料から生まれた作品だった。
「作品は作り込むというよりも、素直に素材が生かされていて、使っていくうちに経年変化も楽しめるものを作りたいという想いがありました」と、作品づくりの裏側を教えてくれた。
そんな内山さんは、昔からアンティークや古道具が好きだったとのこと。
「木製のピザピールとか、あとはビーチコーミングが趣味で、河原に転がっている丸い小石を拾ったりしていました」と思い出話にデザインソースのヒントが見え隠れしていた。
「素朴」というフレーズは捉え方によって微妙にニュアンスが異なるかもしれない。言葉を代えるなら、「あの控えめな素材感」といったところ。
規律化された工業製品のようで、実は何ひとつとして同じではない、フリーハンドで生まれた愛らしくもぼてっとしたユニークなシェイプは、まさに彼女の飾らない優しさやあたたかさそのものを反映していることが実直に伝わってきた。
「黒いカッティングボードはモダンに見えてとても新鮮でした」と伝えたところ、
内山さんは、「黒豆を煮る時にも使われる鉄粉TOお酢で鉄媒染液を作り木の成分に含まれるタンニンと反応させて黒染めをしています。
仕上げにも、えごま油を染み込ませていて全て口に入れることができる着色をしています」と、制作方法をこともなげに明かしてくれた。
作家さんは大きく2通りのタイプに分かれると思っている。
作家活動と私生活を完全に切り離している人と、逆に作家活動が生活とが連動して作品作りに反映されている人。
もしそう分けられるのであれば、内山さんは後者な気がする。
実際に本人も、「作家として活動していても、生活に無理を加えることはできないと思っています。
私の場合、生活を大事にすることが考え方や作るものにも繋がっていくと思っています」と、語ってくれた。
作家としての芯の強さや完成された素晴らしい美学を持ち合わせた中で、ひとりの人間としての内山さんそのものから湧き出た感性が作品に吹き込まれていると思い至ったのは、今回お会いして得た収穫のひとつ。
「作品」でありながら、生活の道具として使うことを前提に生まれたカッティングボード。
使っていく中で月日が経ち、それぞれの表情に仕上がっていく。
それはまさに作家であり母である内山さんのライフワークそのものを体現しており、必然的に生まれ、半分自然に身を任せることで人生のように変化していく象徴なのかもしれない。
僕が持っている内山さんのカッティングボードはまだまだ若い。
これから使っていく中での変化を楽しみ内山さんが表現したい想いを少しずつ理解していけたらと思う。
NiOR と内山玲 「二人展」
11 /19 (土) - 11/20 (日)
11am – 7pm
groundfloor Gallery 東京都目黒区中目黒1-8-1 2F
お問い合わせ:customer@undm.jp / 03-3794-4037
イベントの詳細はコチラ