Meeting with Takashi Tsushima
2024年の春夏コレクションでテキスタイルのコラボレーションワークを行い、インスピレーション源となったイラストレーター津島タカシ氏。 今回は、津島氏とデザイナーの河野が対談。そこで聞いた、ご自身の創作活動やご自身の創作活動コラボ制作に対する想いについて伺った内容をお伝えします。
−まずは津島さんの経歴を教えてください。
津島さん(以下津島):キャリアの最初は会社所属のイラストレーターとして、3年間活動していました。
当時はまだ、PCが主流の時代ではなかったので、手書きなどのアナログな手法でイラストを描いていましたね。
河野:確かに当時はデジタルな技術が発達していませんでしたね。
僕が10代のころ読んでいた雑誌も実は手描きのイラストが多かったと聞いています。
会社員からフリーランスとしてやっていこうと行動した決め手はありましたか?
津島:仕事の内容は「企業から様々な依頼を受けて希望通りの作品を作る」というものだったのですが、 私の師匠のイラストレーター(現 美術家)の方から「そのままだと自分の絵が駄目になるよ」との助言をいただいたことをきっかけに、ふと「あ、会社辞めよう」って思い立って何の計画もなく退職を決意しました。
その後、助言をくれた師匠に弟子入りをお願いした際に 「とりあえずアトリエに遊びに来たら良いじゃん」とお誘いしてもらい、毎日アトリエに遊びに行くようになりました。
それから周囲からのお声がけもあり、イラストレーターとしてのお仕事を少しずついただけるようになったんです。
河野:では、当時は請負でお仕事をされていたわけですね。そこからご自身で世界観を作り、作品を発信していこうと決めたきっかけはありますか?
津島:ギャラリーショップで作品展示のお話をいただき、「自分らしい作品を作成してみようかな」と考えたことが世に発信していくきっかけになりました。
それから個展のお誘いも受けるようになり、ありがたいことに毎年自分の作品展を開催しています。
最近はやはり、Instagramでの作品の発信を見た方からお仕事をいただくことが多くなりましたね。
河野:言うなれば流れに身を任せていたら今に繋がったのですね。
でもそれは津島さんのポテンシャルがあるからこその結果だと思います。
津島:仰る通り、自分のイラストレーターとしての歴史を振り返ると、偶然が必然になり、流れに身を任せて今があるのだな、と実感させられます。
「お声がけいただいたことには乗っかろう!」その気持ちで仕事を続けていますね。笑
―津島さんがイラストレーターになろうと思ったきっかけを教えていただけますか?
津島:子供のころ、「Dr.スランプ アラレちゃん」や「ドラゴンボール」の作者である鳥山明さんに憧れて漫画家を目指していました。
ただ、ストーリーや場面が浮かばず、「自分は描きたいイラストを描く方が向いているのだな」と実感し、漫画家の夢とはさよならしました。笑
そんなことから、中学生からイラストレーターが夢になり、デザイン科のある高校に進学した結果、今があります。
―中学生からの夢を一途に現在まで活動をされている津島さん。作品制作において大切にされていることを教えていただけますか?
津島:「ちゃんと描かない」ということを常に意識しています。
自分の作品は動物が多いのですが、資料や写真を見て描いてしまうと、忠実に描きすぎて自分らしさや新たな発見が失われてしまう。
だから自分の思ったままに「ちゃんと描かない」ということを大切にしています。
河野:洋服も結構通じるところがあって、デザインのバランスや完素材など、完璧なクオリティを求めすぎると服が面白くなくなってしまうんです。優等生すぎてもいけないということを感じることがよくあります。
―動物の作品が多いとのことですが、人物や風景ではなく、なぜ動物を描かれることが多いのですか?
津島:私は「言葉にならない感情」を描きたいと考え、自分の作品を観ていただいた方に自由な感性でその感情を受け取ってもらいたいという想いを抱いています。
そうなると、人物を絵にすると表情が豊かすぎてしまうため、どんな感情を描いた絵なのかわかりやすくなってしまう…。そこで、表情の少ない動物を自由に描き始めることにしました。
感情が汲み取れないような絵ばかりですが、観た方の感想を伺うと自分の意図していたことが通じていることが多く、とても嬉しく思っています。
―津島さんの作品はとても個性あふれる作品ばかりですが、ご自身のイラストの特徴を教えていただけますか?
津島:「色の使い方」にはとても注力しています。
動物たちにはそれぞれ持ち合わせた色味がありますが、そこをあえて忠実に再現せず、何度も色味のシミュレーションし、自分が一番しっくりくる色使いにしています。
例えば、チーターは黄色と黒のコントラスとが特徴ですが、赤やピンクを使ってみたり、ゾウでも、グレーでなく黄色や緑、赤を使ってみたりしています。
何度もシュミレーションする中で様々な色の組合せの発見があり、とても楽しいです。
河野:僕もはじめて津島さんの作品を拝見した時、その絶妙なカラーやバランスが印象的で引き込まれていきました。後日談で分かったことなのですが、手描きではなくコンピューターで制作されていることもとても興味深かったです。
津島:確かに「デジタルだけれどアナログに見える描き方」も特徴ですね。
幻想的で温かみのある見え方になるということと、実は自分の性格も関係しているんです。笑
手描きだと修正したい箇所を塗りつぶしてイチから描き始めないといけないのですが、デジタルだとその部分だけすぐに修正がきくのがとても便利で、色のシミュレーションも簡単だから、自分のしっくりくる形を心ゆくまで模索ができるのが嬉しい点です。
自分の納得いく作品にするために細かくこだわることができ、自分の性格にもとても合っている描き方です。
河野:確かに何度もやり直しがきくからこそ何度も色を重ねられるし、逆に色味の奥深さがでてくるということですね。
↑コラボテキスタイルのイラスト「象のいる幻の風景」
一様々な動物たちを描かれる中で1番イラストに描きやすい動物、描きにくい動物はありますか?
津島:描きやすいのは「ゾウ」ですね。
素直にゾウが好き。なおかつ大きくて特徴さえ捉えていればどうデフォルメしてもゾウになります。
河野:小さなお子さんが描いたとしてもゾウはゾウって分かりますもんね。笑
逆に難しいのは何でしょう?
津島:逆に1番難しいのは「セキセイインコ」かもしれません。
河野:今も(オンラインで対談中)うしろで鳴き声がします。笑
津島:そうなんです。セキセイインコはずっと飼っていて一番身近な存在のため、表情ひとつまで気になってしまい、型にとらわれてしまうんです。笑
自分の大切にしている「ちゃんと描かない」というポリシーが崩れてしまうからですね。
―さて、ここからは今回のコラボレーションに関してです。UNDECORATEDの第一印象とコラボの話を聞いた時に感じたことを教えていただけますか?
津島:UNDECORATEDに抱いた第一印象は「上品さ」です。でも、決して高飛車ではなく向こうから寄り添ってくれるような感じ。安心できるような。
河野:UNDECORATEDDのものづくりでは日常で垣間見えるモダンさを意識しています。服やビジュアルから、そう捉えていただけたのはとても嬉しいことです。
津島:本当にとても好印象でした。その印象は今も変わりませんよ。
だから、コラボの話を聞いた時は自分の絵で大丈夫なのだろうか? 間違っていないだろうか? とさえ感じましたが、実際に河野さんに説明してもらい、納得とともにとても興味が湧きました。笑
河野:初見では動物が視覚的な印象として強い津島さんの作品ですが、先ほど言ったように僕が最も惹かれたのはこの奥深い色使いでした。
津島さんの作品を壊さずに「アンデコらしさ」を表現するためにすごく考えました。
そこで、作品を限界まで引き伸ばして、動物の存在を薄めることで津島さんらしい色使いにフォーカスしたテキスタイルを作ることにチャレンジしました。
津島:出来上がったお洋服を見て、まさに自分とUNDECORATEDの良いところを凝縮したコラボレーションだと感じましたし、それぞれの味を最大限に活かされていて、「自分の絵ってやっぱりいいんだ」と自画自賛でした。笑
本当に嬉しかったし、びっくりしました。笑
―最後に津島さんの今後の展望を教えていただけますか?
津島:今後も変わらず、いろんな人の生活に入り込んで、ほんの少しの幸せをお届けできる作品を発表していきたいですね。
今回のお洋服のコラボのように、衣食住のすべてのシーンの中に寄り添って、作品がスパイスとなり、幸せを感じてもらいたいーー。
そんなイラストレーターになれたら自分も幸せです。
河野:今日はありがとうございました!
津島タカシ氏が「それぞれの味を最大限に活かしたコラボレーション」と表現したのと同じく、河野自身も、「商品の出来上がりを想像して津島氏の作品を選ぶのではなく、直感で“これがいい”と思ったものを選んだ結果、最高のコラボアイテムを作り上げることができた」と語っていました。
オンラインストアでは津島氏とのコラボテキスタイルを使用した商品が好評発売中です。ぜひご覧ください。
2024Spring/Summer Collection ページ
津島タカシ Takashi Tsushima (@marutsu817)