
Organic Cotton Denim Pants*Crashedのはなし
デザイナーが純粋にファッションを楽しんでいた頃の気持ちを振り返って製作したUNDECORATED 2025 Spring/Summerコレクション。「Organic Cotton Denim Pants*Crashed」は、その中でも象徴的なアイテムです。
「UNDECORATEDといえばベーシックでミニマルなデザイン」というイメージを刷新するようなこのアイテムについて、製作のきっかけや想いをデザイナー河野に聞いてみました。
デザインのヒントは20年ほど前の自分
―― Organic Cotton Denim Pants*Crashedを作ることになったきっかけは?
河野: 実家が引越しをすることになり、残してあった僕の荷物も整理することになったんです。いざ片付けていくと、10代や20代前半の頃の洋服がたくさん出てきました。
その頃の僕は古着にハマっていて、原宿のショップに入り浸るように通ってはグッとくるものを買い集めていました。片付けていた品々はそれぞれ思い出深いものには違いないのですが、中でも当時の記憶を最もあざやかに呼び起こすきっかけをくれたのが、「Organic Cotton Denim Pants*Crashed」のモデルになったデニムです。
もともと両膝が大胆に破れたエッジの効いたデザインだったのですが、それを何年も毎日のように履いていたから、踵が擦り切れ、ヒゲも刻まれて、僕が着たことで生まれた“味”みたいなものがしっかり出ていました。
久しぶりに手に取って、「20年前、学生時代はファッションをもっと楽しんでいたな」と、ちょっと忘れかけていた感覚が一気によみがえりました。
デザイナーとして服を作ること〜UNDECORATEDのデザイン〜
――今の河野さんの服、イコールUNDECORATEDの洋服ですが、それと思い出のデニムとはかなりテイストが違っていますね。
河野: 確かに。笑
よく「UNDECORATEDはベーシックでミニマルなデザインの洋服が多くて他のアイテムと合わせやすい」という反応をいただきます。確かにそうだと思いますし、愛着を持って着ていただけるのは嬉しいのですが、その背景には、「素材の良さや機能性――たとえば、カシミヤのやわらかさや優しさ、コットンやシルクのなめらかな質感、素材を組み合わせることで生まれる新しい感触――をより感じてもらうにはどうすれば良いか?」と考えてデザインしていった結果、シンプルな洋服が出来上がる、という流れがあります。
なので、最初から「シンプルな洋服を作りたい」と考えて服作りをしているわけではないんですよ。
ただ、そうしたUNDECORATEDの服作りは、ともすると「どこか論理的だな」と感じていた部分もありました。そのことを明確に気づかせてくれたのが、実家に置いてあったこのデニムだった、というわけです。
20代の頃、「ただただ純粋にファッションを楽しんでいた僕」との“再会”は、もっと自由な服作りを楽しんでも良いんだ、という気持ちをかき立ててくれたし、「Organic Cotton Denim Pants*Crashed」へと繋がっていきました。
“理論的な服作り”と“ファッションを楽しむ”を掛け合わせる
↑河野が実際に履いていたデニム
こうして見てみるとそっくりだ、と思ってもらえるでしょう。
しかし、随所に「UNDECORATEDらしさ」の要素もしっかり感じられるようになっているのが「Organic Cotton Denim Pants*Crashed」です。
たとえば、元になっているデニムのシルエットは当時流行りだったブーツカットなのですが、「Organic Cotton Denim Pants*Crashed」ではストレートシルエットにし、ペイントも白にすることでUNDECORATEDらしいクリーンな印象に仕上げました。
素材もデニムでなかなか使われることのないオーガニックコットンを使用しています。
そもそもデニムって、農作業のような重労働の現場でも破れない耐久性の高い厚手の素材で作るものなので、「肌あたりが優しくやわらか。保湿性にすぐれているので乾燥しやすい季節でもなめらかな履き心地。さらに、洗濯をしても繊維に弾力性があるので肌あたりの優しさを長く保つことができる」というのが特徴のオーガニックコットンを素材に選ぶのは、本来のデニム作りの考え方とは相反するところではあるんです。笑
これも“らしさ”ですね。
このデニムで最も目を惹くのは膝に大きく空いたダメージ部分でしょう。
インパクトは大きいと思いますが、ただ大きく穴を空けたわけではなく、そこから見える 素肌がコーディネートにほど良い抜け感を生んでいるし、何より「パックリ大きく空けている潔良さがモダン」だと思っています。
踵部分の破れは元々のデニムにもなかったのですが、僕が20代の頃は地面に引きずるくらいの長さで履くのが定番だったこともあり、結果として裾を引きずって歩いて“破れてしまって”できたんです。
このダメージ感もおもしろいと思って再現したのですが、くるぶし部分までダメージ加工することでサンダルやローカットのシューズと合わせても裾を気にすることなく履きこなしてもらえるし、女性ならパンプスを合わせた時に足首が見えてスッキリとした抜け感が演出できるように仕上がっています。
* *
デザイナーのファッション遍歴やファッションを純粋に楽しんでいたあの頃の気持ちと、UNDECORATEDらしさが詰まったブランドの新たな一面を象徴するデニム。
こちらの記事で紹介したOrganic Cotton Denim Pants*Crashedはオンラインストアにて販売中です。
LOOKページにて着こなしも紹介しておりますのでぜひご覧ください。