手塩にかけて作ったパイル編み靴下の話

靴下にこんな頭を悩まされるとは思ってもいませんでした。

手頃な値段だけど妥協のない靴下。
1年半かけてようやく完成しました。

自分のモノづくりを熱く語ることは少ないですが、これだけ時間と熱量をかけたので少し語らせてください。

アメリカに行くたびに買い足していたRAILROAD SOCKの6足パック。 程よい肉感と、緩さ。洗濯ですぐにへこたれてしまうけど、ここ数年は毎日このRAILROADの白いリブソックスを履いていました。



そんななかで起こった新型コロナのパンデミック。 海外に行きづらくなって、ストックも切れそうなころ。 「だったら自分で作るか」と思ったのがきっかけで、そこから奈良県で明治時代から続く玉井商店さんとの開発をスタートさせました。

はじめは原料にも製法にも妥協のない一足を、と張り切り、柔らかいのにへこたれない程よい肉感のいわゆるRAILROADのアップデートを目指しました。 無染色のオーガニックコットンを使い、キックバックに必要なマルロン糸もポリエステル糸を入れない。 ゲージと度目の調整だけでダレない靴下を、、と思っていました。

が、これが難しい。
糸が柔らかすぎて乾燥機をかけると型崩れしてしまったり、縮率の調整が難しかったりとさっそく壁にぶち当たる始末。


*最初に無染色オーガニックコットンで作った靴下の試作

ゲージや糸の番手を変えたり、編み方を工夫して何度か調整しましたが思い通りにはいきませんでした。

行き詰まって一ヶ月ほど考え、方向性を変えて原料を見直すことに。 オーガニック糸から毛羽立ちの少ないコーマ糸に変更してRAILROADの面影は残しつつも綺麗な印象に持っていきました。 ナチュラル路線からは少し遠のきますがウレタン糸も入れてコシのある履き心地を目指しました。 ここでついに乾燥機に入れてもへこたれない靴下が完成です。


*コーマ糸を使って完成した靴下の1stサンプル

出来上がって一番感動したのは足入れのパイル編みの柔らかさ。 オーガニック糸に比べてキメ細かくコシのあるコーマ糸に切り替えたことで、パイル編みに反発力が生まれきめ細かく弾力感のある肌触りに。 偶然の産物ですがこれがモノ作りの一番の醍醐味かも。


*足入れの膨らみ感のあるパイル編み

2週間ほど自分で履いて試した結果、「これなら多分、半年後もへこたれない」と自信が持てました。「履く人を選ぶ靴下」よりも「みんなが履きたい靴下」を目指して「毎日履きたい靴下」が生まれました。

手頃な値段も何とかキープできたので、試し買いもできると思います。 是非一足(と言わずたくさん!)履いてみてください。

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