About 山野アンダーソン陽子

先日「とUNDECORATED」がローンチされました。 記念すべき第一回は、ガラス作家 山野アンダーソン陽子 個展「PICKNICK」です。 作家はどんな想いで、どんな作品を作っているのか、お話を伺いました。


――まず、ガラス作家を目指した経緯について教えてください。

山野:ガラスに興味を持ったのは10代の頃。母親に連れられてスカンジナビアの展覧会に行ったんです。その時にガラス作品っていいなって思って…そこから興味を持ち、自分で調べ始めたのがきっかけです。

高校生の時に、スウェーデンに学べる場所があると聞いて大使館に行き、資料を集めました。 もちろんその資料はスウェーデン語で全く読めなかったので、辞書を買って、翻訳して、をひたすら繰り返していました。


――小学生の頃から!長い間興味を持ち続けたのはすごいですね!

山野:今のように簡単に調べられなかったのがちょうど良かったんだと思います。 興味のスピードと知識がちょうどよく作用したのかもしれません。

そして日本の大学を卒業後、スウェーデンのガラスの王国スモーランド地方で技術を学び、ストックホルムの芸大で修士号を取得しました。




――ガラスをとことん突き詰めましたね。 ガラスのどんなところに魅力を感じたのでしょうか?

山野:⽇本ではガラスは夏物だと教えられて育ってきましたが、スウェーデンでは光を美しく溜め込む素材として、⻑く暗い冬にも楽しまれています。冷たいような温かいような、固体のような液体のような、光のような影のような。 持ち主それぞれがそれぞれに取り⼊れることのできる多⾯的なところがガラスの魅⼒だと思います。


――では、作品の作り方について。作りたいものをある程度イメージしてから作り始めるのか、そうではなく、作りながらかたちにしていくのか?作品の制作過程を聞かせてください。

山野:20年以上作業してきた経験もあり、⼤体のものは、作りたいものの制作過程をある程度予測できます。でも、思った以上にうまくいかなかったり、想像よりうまくいったりすることもありますので、制作してみないとわからないんです。微調整のところでは、作りながら形にしていくことが多いです。




――コップやワイングラスに限らず、花器やブックエンドなど、たくさんの作品を作っていると思います。作品はどういったところからインスピレーションを受けているのでしょうか?

山野:インスピレーションは⼈の行為や⾏動から得ています。 例えば、学⽣の時に友⼈が展覧会の初⽇にワインを飲んで、飲み終わったボトルにもらった花を⽣けているのを⾒て、ワインボトル型の花器を作ったり。また、本棚の本と本の間にハガキや切⼿、紙幣を挟んでおく⾃分の癖から、本の形をした中が空洞になっているガラスでブックエンドを作ったり。身近な人の行為や行動が始まりになっているものがほとんどです。

今回は、展⽰会のテーマ「ピクニック」を意識して、ピクニック⽤の⾷器を制作させていただきました。


――『と UNDECORATED』記念すべき第一回が山野さんです。 こういったプロジェクトについてはどう思いますか?

山野:⽣活空間に存在しているので、服とガラスってそんなに異業種と感じたことはありません。⽣活に必要な道具を作っている⾝としては、今回のコラボレーションにもあまり違和感はなかったですし、すごく良い提案だと思っています。


――スウェーデンでの暮らしについて。
スウェーデンで技術を学んだのち、日本に戻って作品を作る、という選択肢もあったと思います。そんな中で作家としてストックホルムという土地を選んだ理由は何だったのでしょうか?

山野:ストックホルムの学校を卒業して、作業場をストックホルムに共同で持てたことがきっかけです。スウェーデンでは、ガラス産業が古くから活発で、⼤学レベルでも⼯芸ベースでガラスを学ぶ場があります。⻑い歴史の中で培われた⽂化や⼈の癖、知識がとても刺激的で、ガラスに対しての反応の良さも魅力的でした。 また、ガラス制作はチームワークなので、信頼できるいいチームと巡り合えたこともありがたかったです。 そして何より、寒くて暗い、⻑い冬がガラス制作にはピッタリなんです。 ストックホルムは⾸都ではありますが、ヨーロッパの端っこで、⾃分の制作に向き合える環境があり、ちょうどよく社会との繋がりもあり、仕事がしやすい場所です。




――ストックホルムの好きなところを教えてください。

山野:森にも街にも近いところが好きです。 あとは⼈が⼈に⼲渉しないところ。一緒に学んできた作家仲間やアシスタントとのフラットな関係性も好きです。


――休⽇の過ごし⽅なども気になります!

山野:友⼈を招いてご飯を⾷べたり、森にピクニックに⾏ったりします。あとは髪の⽑を切るのが得意なので、⾃分や家族の髪の⽑を切ってあげることもあります。⼤きな洗濯やいつもより念⼊りな掃除、⼿間をかけた料理をして、作り置きをすることもあります。あとは植物の⽔やりと葉っぱの⼿⼊れ。友⼈とオンラインでおしゃべりをしたり、オンライントークイベントやニュースを聞いたりしながら家事をやっています。


――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

山野:2019年より、ライフワークプロジェクトとして、⽇本とスウェーデン、ドイツの画家さん18人とコラボレーションをしています。 男女・年代・スタイルの違う18人に声を掛けさせていただき、それぞれの画家さんの描きたいガラス⾷器を伺い、それを私が制作し、ガラス⾷器をモチーフに静物画を描いていただくプロジェクトです。 壊れやすいガラスが絵画の中に何百年と存在し得るように、現在だけではなく、⾃分が存在していない未来の⽅たちにも、現在のガラス⾷器のあり⽅を伝達していけたらと思います。

山野アンダーソン陽子
2001年よりガラス産業のメッカでもある南スウェーデンのスモーランド地方、フィンランド、ベネチアにてガラス製作技術を学ぶ。2004年、Konstfack(国立美術工芸デザイン大学)セラミック・ガラス科修士課程在学を機にストックホルムに拠点を移し、現在グスタブスベリにアトリエを構え、ガラス制作の活動の場としている。2011年、ストックホルム市より文化賞授与。2014年、スウェーデン議会が作品を貯蔵。EUのみならず、イギリス、セルビア、日本などでも作品を発表し、ライフワーク「Glass Tableware in Still Life」の活動にてガラス食器のあり方を多方面から表現思考する。

とUNDECORATED ―ガラス作家 山野アンダーソン陽子 個展―
4/16(土) - 4/24 (日)  1PM - 7PM


作家在廊予定日 4/16(土) 1.30PM – 6.30PM
groundfloor Gallery
東京都目黒区中目黒1-8-1 2F
03-3794-4037

 

photo by Gustav Karlsson Frost